栗田工業株式会社(本社:東京都中野区 代表取締役社長 中井 稔之)は、土壌・地下水中の汚染物質である、塩化ビニルモノマーを含む塩素化エチレンの分解菌を大量に培養する技術を開発しました。この大量培養技術を用い土壌・地下水汚染浄化技術「クリオーグ・パワーバイオ法」の適用先を拡大し、汚染体積が数万立方メートル規模の大規模な汚染サイトの浄化に注力していきます。
微生物による土壌・地下水の浄化方法には、浄化場所に生息している菌を利用し、栄養剤を注入し活性化させることで汚染物質を分解する「バイオスティミュレーション」と、浄化場所に生息している菌に加え、外部で培養した菌を栄養剤とともに注入することで汚染物質を分解する「バイオオーグメンテーション」があります。
当社は、土壌汚染対策法の特定有害物質であるテトラクロロエチレンをはじめとした塩素化エチレンはもとより、その分解過程で生成する塩化ビニルモノマーも、無害化する唯一の分解菌であるデハロコッコイデス属細菌を安定的に培養する方法を開発し、本分解菌を用いた「バイオオーグメンテーション」として2008年から「クリオーグ・パワーバイオ法」の適用を進めてきました。しかしながら、分解菌の活性を長期間維持し大量に培養することは困難であったため、半年程度の短期間に浄化できるのは汚染体積が数千立方メートル程度の小規模な汚染サイトに限られていました。これに対し、当社は大量培養技術の開発を進め、分解菌に対する食品添加物を主体とした栄養剤の選定やその最適添加率の設定等、分解菌の活性を長期間維持する培養条件を確立するとともに、培養環境を最適制御する大型培養装置を開発することに成功しました。大量培養した分解菌は、複数の汚染サイトで長期試験を行い、塩化ビニルモノマーを含む塩素化エチレンを確実に分解できることを実証しています。大量培養技術の開発により1ヶ月間に従来の約20倍の分解菌が培養可能となったことで、汚染体積が数万立方メートルの大規模な汚染サイトを「クリオーグ・パワーバイオ法」によって半年程度で浄化することが可能となりました。
塩化ビニルモノマーは、デハロコッコイデス属細菌以外の微生物では分解できないため、「バイオスティミュレーション」やデハロコッコイデス属細菌以外を用いた「バイオオーグメンテーション」では塩化ビニルモノマーが残留することがあります。現状は土壌汚染対策法の特定有害物質ではないものの、その毒性の高さから特定有害物質としての指定やその基準値が具体的に検討されており、今後の法改正の動向に伴って「クリオーグ・パワーバイオ法」へのニーズがさらに高まることが予想されます。
当社は、塩化ビニルモノマーを無害化する唯一の分解菌であるデハロコッコイデス属細菌とその大量培養技術を活用し、「クリオーグ・パワーバイオ法」を大規模汚染サイトにも展開していくことで、より一層環境負荷低減に貢献していきます。