このたび、産業廃棄物処理事業者である株式会社富士クリーン(本社:香川県綾歌郡 社長:馬場一雄 )において、「持続可能なエネルギー利用の実現」に貢献する「縦型乾式メタン発酵技術(KURITA DRANCO PROCESS®)」を採用した施設を完成し、10月より運転を開始する予定です。本施設は、産業廃棄物および一般廃棄物をメタン発酵させて生成したバイオガスを発電燃料およびボイラ燃料として有効利用するもので、発酵残さは既存の焼却施設で処理されます。縦型乾式メタン発酵施設としては国内最大規模(発酵槽3,000m3)であり、本技術導入により株式会社富士クリーンは、温室効果ガス削減効果を約10,000t-CO2/年と見込んでいます。
当社は本実績を踏まえ、産業廃棄物処理施設のみならず、一般廃棄物処理施設(ごみ焼却施設)にも「KURITA DRANCO PROCESS®」の適用拡大を図っていきます。日本国内には、ごみ焼却施設が約1,100施設あり、そのうち中小施設(処理能力100トン/日未満)は約半数を占めるといわれています(*)。ごみ焼却施設では焼却時の余熱を用いて発電することでエネルギー回収を進めており、処理能力が100トン/日以上の大規模施設では多くの施設で発電を行っています。一方、中小施設においては発生する余熱が少なく蒸気タービンによる発電ができないため、発電を実施する施設の割合が約4%にとどまっており、エネルギー回収率を上げることが社会的課題となっています。また、従来のメタン発酵技術では中小施設においてもエネルギーを回収することは可能でしたが、原料となる紙ごみや発酵不適物であるプラスチック類の受け入れに制限がありました。
これに対し、「KURITA DRANCO PROCESS®」は、国内で初めて適用する縦型乾式メタン発酵技術としての特長を活かし、家庭から排出される生ごみ・紙ごみや動植物性残さ、事業系紙ごみはもとより、有機汚泥、産業廃棄物など多様な廃棄物を受け入れることができ、中小施設においても安定したバイオガスの生成と、従来技術と比べても高いレベルでのエネルギー回収を可能にします。投入ごみトン当たり150Nm3程度のバイオガスを得ることができるため、従来技術である湿式メタン発酵技術と比べてバイオガス生成能力は2倍以上となります。
今後、当社は自治体の中小のごみ焼却施設の更新事業や基幹的設備改良事業に対し、焼却炉エンジニアリングメーカーと連携して、メタン発酵施設をごみ焼却施設に併設することで、廃棄物から高効率なエネルギーを回収しながらごみ焼却施設で発酵残さの処理を完結する「メタンコンバインド」処理の提案を強化していきます。さらに、回収したエネルギーを施設内での利用だけでなく、電気や熱源として地域全体で有効活用する取り組みを通して、廃棄物系バイオマス利活用の普及を推進し、持続可能な社会の実現に貢献していくことを目指します。
(*)日本国内の一般廃棄物処理施設(ごみ焼却施設)の数および発電を行っている施設の割合は、2018年3月環境省公表の「日本の廃棄物処理(平成28年度版)」による。<補足資料>
■株式会社富士クリーンに納入した施設の外観
(手前は、発生したバイオガスを貯留するガスホルダー)
【参考】関連プレスリリース等:
・バイオマスエネルギーの利用促進に向けて国内最大規模の乾式メタン発酵の採用が決定