栗田工業株式会社(本社:東京都中野区、社長:江尻 裕彦、以下「クリタ」または「当社」)は本日、株式会社ispace(本社:東京都中央区、代表取締役:袴田 武史、以下「ispace」)と、ispaceの2027年以降に実施される月ミッションにおいて、クリタが開発する月面水処理実証試験装置(以下「本水処理システム」)を、ispaceのランダー(月着陸船)にペイロード(*1)として搭載し月面までの輸送を実施するための検討に関する基本合意書(以下「本MOU」)を締結しました。
宇宙空間や月・火星において人類が生活や活動をするためには水は不可欠な物質です。さらに、地球から月面などに水を輸送するとなると膨大なコストが掛かることなどから、宇宙分野における水処理の重要性はますます高まっています。そのため、宇宙空間を移動する宇宙機の推薬となる液体酸素および液体水素を、月面に存在するレゴリス(*2)に含まれる氷や水から製造するためのプラントを月面に建設し運用することを視野にした動きが本格化しています。
クリタは、これまでに地上で培ってきた水処理に関する技術や知見を宇宙分野へ応用することを目指し、国立研究開発法人宇宙航空研究開発機構(JAXA)と協働した国際宇宙ステーション(ISS)で使用する宇宙空間向け水再生システムの実証試験(*3)や公募型企画競争「月面推薬生成プラントの実現に向けた水精製及び電気分解プロセスに関する要素試作試験等」への採択(*4)に加え、宇宙環境での使用を想定した小型超純水製造装置の開発などに取り組んでいます。また、ispaceが目指す長期ビジョンである、月と地球を1つのエコシステムとする経済圏の創出「Moon Valley 2040構想」に賛同し、当社は2023年11月にサポーティングカンパニーとして、また、2024年11月からはコーポレートパートナーとして、月面探査プログラム「HAKUTO-R」を支援しています(*5)。
本MOUは、クリタが開発を進めている本水処理システムをispaceのランダーに搭載・輸送し、月面での実証試験に向けて仕様その他の詳細検討などを行うためのものです。本MOUの締結により、同システムの開発をはじめ、クリタにおける月面での水資源の利活用に向けた取り組みを加速していきます。
クリタグループは、ispaceをはじめとする宇宙開発に携わるさまざまな官民と協業することで、宇宙分野における水の回収・精製技術の開発や持続的な宇宙プラントの構築による、人類の宇宙へのチャレンジの一翼を担うことを目指してまいります。また、宇宙分野における研究開発などで得られる知見を活用して、地球上における社会や産業の課題解決に寄与できるソリューションを創出・提供することにより、持続可能な社会の実現へ貢献してまいります。
以上
注)
*1: 宇宙船やロケットが運ぶ貨物や機器のことを指し、科学実験装置、通信機器、観測機器、探査車(ローバー)、衛星などが含まれる。
*2: レゴリスとは天体の表面に存在する堆積物の総称で、月面のレゴリスはきめ細かい砂のようなものであり、近年の観測によればこの中には氷や水が存在する可能性が示唆されている。
*3: 2024年3月12日付当社ニュースリリース「当社の水再生システムの宇宙実証完遂に対し、JAXAから感謝状を受領」参照。
*4: 2024年11月6日付当社ニュースリリース「JAXAの公募型企画競争「月面推薬生成プラントの実現に向けた水精製及び電気分解プロセスに関する要素試作試験等」に採択」参照。
*5: 2024年11月12日付当社ニュースリリース「ispaceの月面探査プログラム「HAKUTO-R」にコーポレートパートナーとして参画」参照。